青森市にある三内丸山遺跡は縄文前期から中期（約5900〜4200年前）の大規模な集落跡です。約1700年にもわたって農耕（稲作）以前の狩猟採集による定住生活が成り立ったのは、当時の気候は今よりも温暖で食物が豊富だったからだと考えられます。逆に、4200年以降にこの場所を放棄せざるを得なかった理由はよく分かっていません。
この三内丸山遺跡と、弥生時代の吉野ヶ里遺跡と比較すると、その違いは一目瞭然です。
| 時代区分 | 縄文時代 | 弥生時代 |
| 生活様式 | 主に狩猟・漁労・採集による定住（クリ等の堅果類の栽培も行われていた） | 主に農耕（稲作）による定住 |
| 環濠・塀などの防御設備 | なし | あり（極めて厳重な守り） |
| 武器の出土 | なし | あり |
| 遺骨に残る戦いの痕跡 | 見られない | 戦死した痕跡のある遺骨も出土 |
| 社会の階層分化 | 未分化（村長などの有力者はいた？） | 住居区域・埋葬区域等に明らかな身分階層が見られる |
| 祭祀等 | 行われていた（土偶がたくさん出土） | 重要視され、巫女等が強い権力を持っていた |
| 他の地域との交易 | あり（上越地域が主産地の翡翠が出土） | あり |
一般的に縄文時代と弥生時代を比較すると次のようになります。
| 完新世初頭（1万1500年前頃）から1万年近く続き、弥生時代とも重なる | 日本列島で食糧生産が始まってから前方後円墳が出現するまで（紀元前10世紀頃から紀元後3世紀中頃まで） |
| 縄文土器は、食料の煮炊きに使われる実用的な器で、文様は縄目文様だけでなく多様 | 弥生土器は、縄文土器よりも形や装飾が簡素で、より高温で焼かれている |
| 植物採集・狩猟・漁労が主な生業（当時の日本列島は食物資源が豊かだった） | 水田稲作が基盤だが、畠で他の作物の生産やイノシシ類の飼育なども行われた |
| 単婚家族が竪穴式住居に定住した。小さな集落は１〜数棟、大きな集落でも数十棟と小規模 | 数棟の小規模な集落から、数十万平方メートルに及ぶ超巨大集落まで規模は多様 |
| 集落の上位組織としての村落があった | 複数の集落がまとまって地域社会が形成され、やがて律令国家へと繋がっていった |
| 身分階層はなく、互恵と平等に基づく氏族共同体だった | 集落や地域社会を束ねるリーダーが登場し、社会が階層化・複雑化した |
| 翡翠などが取引されていたが、利益を目的とした「交易」というより「交換」のレベル | 朝鮮半島や中国とも広く交易があった |
| 原始的な宗教（アニミズムなど）はあった | 祭司や儀礼が発達し、多様な祭器が作られたが、特に銅鐸などの青銅器が重要視された |
| 敵からの防御を目的とした濠や物見櫓などの設備はなかった | 人を殺傷する目的の武器が作られ、防御を重視した環濠集落や高地性集落が発達した |
長く平和な縄文時代が続いた後に、どうして争いが絶えない弥生時代になったのか、その理由を考えることは、人類の平和な未来のためにとても重要なことだと思います。私なりに考えを巡らせたことがConsiderationのカテゴリにまとめてあります。
三内丸山遺跡の全景模型。濠や塀のような防御設備はなく、クリ・クルミなど手入れされた落葉広葉樹林に囲まれています。
約4600年前のものとされる大型掘立柱建物跡。穴の中のクリの木柱はレプリカで、出土した現物は別途保管されています。穴の間隔は4.2mと正確で、すでに測量の技術が確立されていたと考えられます。
復元した大型掘立柱建物。写っている人との比較で大きさが分かります。屋根の形状は諸説があるので、復元されていません。利用目的は不明ながら、祭祀等に使っていたのではないかと考えられています。
大型竪穴建物跡。
大型竪穴建物跡の説明。
復元された大型竪穴建物は、長さ約32メートル・幅約10メートルに及ぶ巨大な建物。用途は、集会所、共同作業所、共同住宅など諸説があります。
復元された大型竪穴建物の内部。
北盛土。捨てられた生活廃棄物が小山にようになった場所で、土器などがたくさん出土しています。
北盛土の説明。
大人の墓（土杭墓）
大人の墓（土杭墓）の説明。
復元された掘立柱建物。高床の倉庫だったと考えられます。
復元された竪穴住居。
（その２）に続く。
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