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「戦争」に至る進化の道

この記事の続編です。「高みから道徳を説く神(=一神教の神)」が現れたのは、ヒトの長い進化の歴史のなかでごく最近で、枢軸時代と呼ばれる紀元前千年紀のことです。この時期には社会や政治が複雑化し、都市の人口は100万人規模になっていました。

帝国と呼ばれるような強大な国家同士が激しい戦争を繰り広げたのもこの頃からです。それでは「ヒトはなぜこんなにも戦争をするようになったのか?」、その理由をヒトの進化に基づいて説明することが、今書き始めている提言の前提となる重要なテーマの一つです。以下に、約半年の読書で分かった事柄を、年代の古い順に箇条書きにしてみます。

「戦争」に至る進化の道

  1. 他の多くの哺乳類と同様、配偶者獲得の闘いに勝つために、男性の体格が大きくなり、攻撃性が高まった(潜在的繁殖速度を勘案した実効性比が男性に偏っているので女性は配偶者獲得の闘いをしない)
  2. 大脳皮質の発達によって得られた高度なメンタライジング能力によって、霊的存在を信仰する心の動きが集団内で共有され、アニミズムなどの初期の宗教が始まった
  3. 太古の自然環境下では経験豊富な年長者や実力者の発言に素直に従った方が生存に有利(適応的)だったので、そのような行動が進化した
  4. およそ一万年前に始まった農耕や牧畜はそれ以前の狩猟採集生活に比べて重労働なので、体格と体力に優る男性が生産に必要な資源を独占所有するようになり、男性優位の家父長制社会が始まった
  5. 農耕や牧畜によって食物を蓄えることが可能になるとともに、役割の分担が始まり、分配に格差が生まれ、社会が階層化していった
  6. 家父長制かつ一夫多妻制の社会では、高い地位についた男性ほど多くの配偶者を得て、次世代に多くの遺伝子を残せるようになった
  7. 高い地位についた男性は、その特権を自分と同じ遺伝子を持つ子供や血縁者に引き継ごうとするので、高い地位は代々世襲されるようになった
  8. 上記6.や7.に成功して権力の頂点に立った王は、自らの権力拡大欲に加え、同じ遺伝子を持つ子孫により多くの資産を残そうとするあまり、自国の範囲を超えて他国を侵略するようになった
  9. その一方で、被支配者階級となった国民は、上記3.の理由から、王の決定に従順に従い、王のために他国と戦わざるを得なくなった
  10. 他国から侵略されるリスクが高まると、防御のための強固な城壁で囲まれた大都市が形成されるようになった
  11. 大都市での生活に伴うストレスに対処するために、宗教の儀式が複雑化し、儀式のための神殿が造営され、教義宗教へと発達した
  12. 都市がさらに巨大化し、戦争も激化すると、それに伴う大きなストレスに対処し、人々の心を一つにするために「高みから道徳を説く神」が生み出され、一神教が成立した
  13. 王たちが国家統一のための梃子として利用したため、一神教は世界中に広まり、その排他的な教義ゆえに現代でも深刻な分断と争いの原因となっている

農耕や牧畜の開始をきっかけにヒトが採用した社会の枠組み、つまり少数の指導者が社会全体を率いる枠組みにおいては、「自分の遺伝子をできるだけたくさん次世代に残したい」という本能に基づいた一個人の欲求のために、社会全体が争いに巻き込まれてしまいます。

しかし、「魂」のような霊的・非物質的なものを持ち出さなくてもヒトには確かに自由意志があり、自らの選択によって遺伝子の束縛から逃れることが可能です。今こそ、現代の道徳観・倫理観に沿って、社会の枠組みを見直す時期だと思います。

(次回「利他性と共感の進化について」に続く)

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