チャールズ国王の戴冠式の感想

チャールズ国王の戴冠式の様子をテレビで見ました。イギリス国内では祝賀ムードが盛り上がる一方で、若い世代を中心に君主制廃止論を唱える人も増えているようです。

イギリス王室が所有する不動産はとてつもなく広大で、一等地の商業施設などから多額の賃貸収入を得ていますが、そもそもイギリス王室がどうしてそのような不動産を所有することになったのかは、ただ「王様だから」という以外に明確な根拠がないのではないでしょうか。また、それらの不動産に対する相続税も免除されていますが、それはどういう根拠からなのでしょうか。戴冠式でチャールズ国王に引き継がれた数々の品々についても同じです。それらのなかには、かつての植民地から「元々は我が国も物なので返してくれ」と言われているものもあるようです。いずれにしても、テレビに映し出される映像は、「すべての人間は生まれながらにして平等である」という大原則に合わないものです。

このブログに何度も書いてきたように、「王」はバックミンスター・フラーが「クリティカル・パス」のなかで書いている「ウマにまたがり棍棒を腰に吊るした小男」の末裔に他なりません(→こちら)。

自分の民と群れの世話をしている羊飼いの王(※)がいる。そこに、ウマにまたがり棍棒を腰に吊るした小男がやってきた。彼は羊飼いの王のところに乗りつけ、頭上から見おろして言う。「さて、羊飼いさんよ、あんたがあそこで飼っているのはとてもみごとなヒツジだからな。知っているかい、ここら荒野であんな立派なヒツジを飼うっていうのはかなり危険なんだぜ。この荒野は相当危ないんだ」。羊飼いは答える。「俺たちは何世代もこの荒野でやってきたが、困ったことなど一つも起きなかった」。 それ以来、夜ごと夜ごとヒツジがいなくなり始める。連日のように、ウマに乗った男がやってきては言う。「まことにお気の毒なことじゃないか。ここはかなり危険だって言ったろう、なあ、荒野じゃヒツジがいなくなっちまうんだ」。とうとう羊飼いはあまりに災難がつづくので、男に「保護」を受ける対価としてヒツジで支払い、その男が自分のものだと主張する土地で独占的に放牧させてもらうことに承諾する。 羊飼いが侵入している土地は自分の所有地だという男の主張にあえて疑問をさしはさむ者はいなかった。男は、自分がその場所の権力構造であることを示すために棍棒を持っていた。彼は羊飼いの背丈をはるかに越えて高く立ち、あっという間にウマで近づいて羊飼いの頭を棍棒でなぐることができた。このようにして、何千年も昔に、20世紀でいうゆすり屋の「保護」と縄張りの「所有権」とが始まったのである。小男たちはこのときはじめて、いかにして権力構造をつくり、その結果、いかにして他人の生産力に寄生して生活するかを学んだのだった。 その次に、ほかのウマに乗った連中との間で、誰が本当に「この土地を所有している」と主張できるかを決する大規模な戦いが始まった。…… (※)原文は「king shepherd」。国ができる前の時代の物語に「王」が登場するのは違和感を感じますが、たぶん「長」や「リーダー」という意味だろうと思います。 (『クリティカル・パス―人類の生存戦略と未来への選択』バックミンスター・フラー、 梶川 泰司訳 白揚社 P135~136)

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