珈琲の産地について

珈琲の精製方法(→こちら)、品種(→こちら)について書いてきたので、最後は珈琲の主な産地についてまとめてみました。

珈琲の産地は、赤道を中心に南北の回帰線に挟まれたコーヒーベルトと呼ばれる地域に分布しています。また、一日の気温較差があるほうが良質の珈琲豆が穫れるので、高級な銘柄の産地は総じて標高1,500mくらいの高地にあります。

プロが教えるこだわりのコーヒー」田口護著(NHK出版)より。
コーヒーベルト

 


主な産地
【中南米】
■ブラジル
全世界の珈琲豆の約1/3を産出する世界最大の産地です。他の国では急峻な山の斜面で栽培されることが多いのに対して、ブラジルの珈琲は主に広大な高原で栽培されています。主な品種は、「ブルボン」「ムンド・ノーボ」「カトゥアイ」などです。精製は乾燥式(ナチュラル)が主体ですが、一部パルプドナチュラルも行われています。ブラジルの豆は味のバランスがいいので、ブレンドのベースとして多用されます。300g中の混入物や欠点豆の数(No2~8)、豆の大きさ(スクリーンNo13~19)、カップ(味の特徴)によって各付けされます。

■コロンビア
ブラジル・ベトナムに次ぐ世界3位の珈琲産地。標高の高い急な斜面で、主に小規模な農家によって栽培されています。主な品種は「ティピカ」「ブルボン」「カトゥーラ」などです。完熟した実を手作業で摘み取っています。精製は水洗式。天日干しをする場所が少ないので、農家の屋根で乾燥することが多いようです。程よい酸味と甘さがあるバランスのいい味が特徴です。豆の大きさ(スクリーンサイズ)で格付けされます。

■メキシコ
世界第6位の産地。グアテマラとの国境に近い南部に生産地が集中しています。主な品種は「ティピカ」です。上品な酸味と香りが特徴で、「カップ・オブ・エクセレンス」に選ばれるような最高級品を産出する農園も多数あります。精製は水洗式。各付けは、産地の高度によって、MARAGOGIPE、STRICTLY HIGH GROWN、HIGH GROWN、PRIME WASHED、GOOD WASHEDの5段階です。

■ジャマイカ
日本では「ブルーマウンテン」の銘柄で有名な産地。カリブ海に浮かぶ小さな島国で、島の中央に標高2,256mのブルーマウンテン山脈があります。その斜面の高地で、「ティピカ」の一種でとても大粒の実がなる「(銘柄ではなく品種としての)ブルーマウンテン」が栽培されています。生産量は少なく、その大部分が日本に輸出されます。精製は水洗式。等級は標高800m~1500mのブルーマウンテン地区で生産されたブルーマウンテン、標高500m~1000mのハイマウンテン地区で生産されたハイマウンテン、標高300m~800mで上記以外で生産されたプライムウオッシュに分かれ、グレードはNO1,NO2,NO3,NO4に分かれます。

■キューバ
キューバはカリブ海最大の島で、島全体で珈琲が栽培されています。主な品種は「ティピカ」「ブルボン」で、日本とフランスへの輸出が大半を占めます。もっとも高級な銘柄は「クリスタルマウンテン」で、水晶が採れる山で栽培されていることから付けられた名前です。甘い香りとマイルドな味が特徴で、飲みやすい珈琲です。精製は水洗式。各付けは、スクリーンサイズと欠点数によって、CM(CRYSTAL MOUNTAIN)、ETL(EXTRA TURQUINO LAVADO)、TL(TURQUINO LAVADO)、 AL(ALTURA)、 MONTANA、CUMBRE、SERRANO SUPERIORにわかれます。

■グアテマラ
「グァテマラ」は古代マヤ語で「常春」という意味で、中米ではメキシコに次いで大きな産地です。主な品種は「ブルボン」。「レインボーマウンテン」で有名な「アンティグア」をはじめ、8大産地と言われる地域があり、シェードツリーという日陰を作る背の高い木の下で栽培されています。精製は水洗式。コーヒーの等級は産地の高度によって、SHB、HB、SH、EPW、PW、EGW、GWの7等級に分類されます。


【中東・アフリカ】
■エチオピア
東アフリカにあり、国土の大半が山岳地帯です。コーヒーノキの原産地とされており、珈琲が飲用されるようになった起源も、エチオピアの羊飼いカルディが山羊が赤い実を食べているのを発見したからだと言われています。昔は、紅海の対岸にあるイエメンのモカ港から輸出されたことから、イエメン産の珈琲豆と同様に「モカ」と呼ばれています。大規模な農園ではなく、零細な農家の畑や野生の木から栽培される割合のほうが多いようです。主な産地は、ハラー、ジマ、リム、シダモ、レケンプティ、イルガチェフェです。精製は乾燥式(ナチュラル)。各付けは欠点数方式で、♯1~♯5の段階があります。

■イエメン
アラビア半島の南西に位置し、中央部の標高2,000m以上の高原地帯で栽培されています。紅海に面するモカ港は、以前は珈琲豆の輸出港として栄えましたが、現在は使われていません。アラビア語で「雨の子孫達」を意味する「バニーマタル」の銘柄が特に有名です。独特の酸味と甘味、ワインを思わせるようなフレーバーがあり、「コーヒーの貴婦人」「コーヒーの女王」などと呼ばれています。その一方、欠点豆の混入率が高く、焙煎前に念入りのハンドピッキングが必要です。精製方法は乾燥式(ナチュラル)。格付けは特にありません。

■ケニア
ケニアは東アフリカの赤道直下にあります。標高1500m~2000mの火山灰土質の高地で栽培されています。主な品種は、「ブルボン」から改良された「SL」という独自の品種です。生産者の大半は小規模な農家ですが、協同組合的な仕組みが作られているそうです。高品質で特にヨーロッパでの評価が高いと言われています。精製方法は水洗式。格付けは、サイズによって最高級AA(ラージビーン スクリーン7.2)、A(6.8)、B、C、E、TT、T、PB(丸豆)に分かれています。

■タンザニア
中央アフリカ東部に位置し、北東部にアフリカ最高峰のキリマンジャロ山(5,895m)があります。主な品種は「ブルボン」「ケント」です。銘柄名のキリマンジャロは、キリマンジャロ山の麓の標高1,500mから2,500m付近のプランテーションで栽培されていいます。強い酸味と甘い香りが特徴で、日本では「キリマン」の略名で人気があります。精製方法は水洗式。各付けは、サイズによって、AA、A、AB、B、C、Eがあります。


【アジア・太平洋】
■インドネシア
ジャワ島、スマトラ島、スラウェシ島などで栽培が行われています。ロブスタ種の栽培が大半を占めますが、アラビカ種の栽培も行われており、スマトラ島の「マンデリン」、スラウェシ島の「トラジャ」、ジャワ島の「ジャワ」が有名です。主な品種は「スマトラ」で、酸味が少なく、独特の強い苦味と後味の甘みが特徴です。生成方法は、水洗式・乾燥式・スマトラ式。各付けは、欠点豆数で♯1~♯6です。

■パプアニューギニア
南太平洋にあるニューギニア島の東半分です。島の中央部に3000メートル〜4500メートルのビスマーク山脈とオーエンスタンレー山脈があり、赤道に近いのに積雪があります。1930年頃に、ジャマイカから「ブルーマウンテン」の苗木が移入されたのが始まりで、主に小規模な農家によって栽培されています。本家ジャマイカと気候が似ているので、高品質な珈琲が産出されます。精製方法は水洗式。

■ベトナム
東南アジアのインドシナ半島東部に位置します。ブラジルに次ぐ世界第2位の生産量を誇りますが、大半がインスタントコーヒーなどに使われるロブスタ種です。国内では、植民地時代の宗主国フランスの手法を取り入れたベトナムコーヒーが飲まれています。

■ハワイ
太平洋に浮かぶアメリカ合州国の州で、熱帯気候です。ハワイ島西岸の「コナコーヒー・ベルト」と呼ばれる一帯で栽培されている「コナコーヒー」は、ジャマイカの「ブルーマウンテン」に次いで高価な銘柄です。

なお、珈琲の各付けについては、このサイトが詳しいです(→こちら)。

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