第11回ドラッカー学会総会&ワークショップ

普段なにも研究活動をしていない幽霊会員の私ですが、5月21日に明治大学のグローバルフロントで行われた第11回ドラッカー学会総会&ワークショップに参加してきました。ドラッカー学会は、設立から丸十年が経ち、単にドラッカーの著作を研究するだけでけでなく、ドラッカーの思想の根幹である「自由で機能する社会の実現」を目指して具体的な実践をする段階に入ったことを強く印象づける内容の総会でした。過去10回に比べるとかなり刺激的で突っ込んだ議論が行われたと思います。

第11回ドラッカー学会総会&ワークショップ

第11回ドラッカー学会総会&ワークショップ

まず、とても有意義だったのは、クレアモントのドラッカースクールで、「ドラッカースクールを卒業し、社会に出るにあたって、本当に大切なことは何でしょうか?」という質問に対して、ドラッカーが答えている映像を観られたことでした。今から13年前、ドラッカーが亡くなる2年前の映像です。ドラッカーは、とてもゆっくりと丁寧に答えていました。日本語訳のペーパーも配られたので、語学力がイマイチな私にもよくわかりました。もっとも重要なポイントは以下の点です。

内側を見る前に外側を見る態度・習慣をつけなくてはならない。<中略>組織の外側に成果がある。会社の中にはプロフィットセンターは存在しない。すべてコストセンターである。<中略>成果がどこに出ているか、見るようにしなくてはならない。それは外の世界だ。

安冨歩氏の講演は、「マネジメント[エッセンシャル版]」で「integrity of character」の訳として上田惇生氏が苦心の末に採用した「真摯さ」に異議を唱えるという刺激的な内容でした。上田氏がこの訳に確信を持った場所(ものつくり大学から吹上駅に向かうあぜ道)は「上田ロード(真摯さの道)」としてドラッカー学会では聖地化されていますが、それに対してこういう講演がOKなのは、ドラッカー学会のオープンさの証拠だと感じました。「真摯さ」という訳については、自分なりにもう少し考えてみたいと思います。もし可能ならば、上田氏自身のコメントも聞いてみたいです。また、安冨氏が主張する「立場主義」という考え方にはとても共感できました。戦後の日本において、人々は「立場を守るために」死に物狂いで「役割を果たしてきた」のだと思います。そして、これからの時代には、「立場を守るため」に代わる新しい目的の再構築が必要な気がします。

西條剛央氏新井和宏氏の対談は、「自由で機能する社会の実現」のための具体的な実践の紹介とも言える内容でした。特に印象深かったのは、「数字は危険。客観性さえあれば、本質と違っていてもまかり通る」という発言でした。私自身も数学や統計学重視の近代科学に強い不信感を持っていて、二人の対談に共感できることが多かったです。一方、「構造構成主義」は、物事の本質に迫るためにとても有効なアプローチだと感じました。さらに、信念同士の深刻な対立を回避することにもつながると思いました。また、実践的な意味において、「意志あるお金は世の中を変える」という言葉もインパクトがありました。

ということで、日常生活に追われるだけの日々を過ごしていた自分にとって、強い知的刺激のあった一日でした。

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