お金の本質を問い直そう(その4)

その1)(その2)(その3)と「お金」について書いてきました。

物事は、さまざまな観点や基準で評価することができます。ある基準で評価すると今ひとつだが、見方を変えて別の基準で評価するとすばらしい!、ということがたくさんあります。価値観が多様化している今日においては、むしろこのような複眼的な物の見方が重要になってきています。

ところが、ひとたび「お金」が絡むと複眼的な物の見方は忘れ去られ、「金額(=売上・利益)」という単一の基準で評価されるようになります。このような強力な還元力は、(その1)に書いた「お金」の機能の「2.価値の尺度」に由来するものです。

売上も利益もその商品が「市場」で受けた評価だと考えると、そこにはさまざまな観点や基準による評価が反映されていると言えなくもありません。でも、ほんとにそうなのでしょうか?

以下にあげるのは、実話というより「どこにでもある話」です。

事業の目的は消費者にとって価値ある商品やサービスの提供して顧客を創造することであって、売上や利益はその結果としてついてくるものというのが正しい道筋である。ところが、事業計画を立てるときには、まず売上いくら、利益いくらという数値目標を定めて、それを達成するためにはどうしたらいいかという逆の道筋で議論を進めることが多い。このように定められた数値目標が、間違った意思決定を誘発する。

新しい商品やサービス、あるいは新しい事業ドメインを選ぶ時、量的に、より大きな売上が期待できるもの、より大きな利益が期待できるものが選考される。たとえそれが、ほんとうに世の中から求められているものとは異質であったとしても……

経済環境・技術・消費者ニーズなどが変化して、ある商品やサービスの存在価値が失われたとしても、その商品やサービスのためにすでに多額の投資をしている場合には、「撤退」という勇気ある判断が難しくなる。

バックミンスター・フラーは、「富は、一般的に私たちの大部分に認められている貨幣ではなく人間の生命を維持・保護・成長させるものだ」と言っています。「お金」を基準に据えると、このような考え方をするのがとても難しくなります。私たちは日常的にさまざまな意思決定を行いながら生きていますが、「お金」という基準に捕われて間違った判断をしていないか、ときどきチェックする必要があります。

(その5)に続く。

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